希望の国

希望の国 感想



園子温監督最新作、前作のヒミズに続き東日本大震災後の日本を舞台に福島の原発事故以降に再度原発事故が架空の都市で起きてからの老夫婦とその息子夫婦をメインに物語は進んでいく。




架空の長島県での原発事故後、老夫婦の一家はギリギリ避難圏外だった家に残り、危険なため出て行けと言われ別の町で生活をはじめる息子夫婦(嫁は腹ボテ)に場面は別れる。一見何も異常の無い境界線間際の生活と子供の為過剰防衛をはじめる嫁の都市での生活を交互に見ていく中で、老夫婦側の何も変わっていないはずなのに決定的に何かが失われた世界と事故が起こっている事はわかっているがその事に日々無関心になっていく世界が浮き彫りになっていく。

老夫婦の奥さんが痴呆症のため「帰ろうよ」という言葉を劇中に事あるごと旦那に言うのだが、終盤に奥さんが家を出て津波で無茶苦茶になった街を彷徨う過程で帰る場所がなくなってしまった事を思い知らされ、行き着いた場所で祭り囃子にのって盆踊り?を踊るシーンで「帰ろうよ」の言葉が意味を成して、消えた街が一瞬見えたような感覚にさせられ愕然とした。
後の老夫婦の選択はそこに帰るにはその方法しかなかったのかと思うと余りに悲しい。

しかし残された息子夫婦と近所の強制避難を強いられた若いカップルの力強さを見てこんなひどい状況でも小さい希望はあるのだと思わせてくれ、それと同時に最後には「あなた、他人ごとじゃないですよ」と釘を刺されたようだった。

実際に災害が起こってから1年半という短期間でこれだけ突っ込んだ内容の映画を実現させた事に拍手。2012年に見るべき作品になっていると思った。

夏八木勲と大谷直子のお二方がとにかく素晴らしかった。

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