The Last of Usについての感想

右が主人公のジョエル。左がAIキャラとして大半お供するエリー。

PS3専用ソフトとしてアンチャーテッドシリーズで有名なNaughty Dogが制作した完全オリジナルのサードパーソンシューティング・アドベンチャー作品。


アンチャーテッドシリーズで映画的なディザスター状態をプレイヤーに体験させることを主眼としたゲームプレイの手法をさらに進め、そこにICOや最近ではBioshock Infiniteでお馴染みなAIコンパニオンキャラクターとの共闘という新しい要素を取り入れた本作は、
物語面ではゾンビロードムービードラマ「ウォーキング・デッド」や、アポカリプス子連れ狼なヴィゴ・モーテンセン主演の映画にもなった小説「ザ・ロード」から色濃く影響を受けたと思われる徹頭徹尾重く、人間が一番たちが悪いと思い知らされる素敵なストーリーである。

ゲーム開始直後のプロローグでは、人に寄生する菌類が爆発的に感染を広げ初め、都市部で被害が拡大していっている状況に放り込まれる。
画像のおっさんジョエルとその一人娘がその危機的状況から脱出するまでがプロローグとなるのだが、最後にこの一人娘が警察に射殺されるのである。この時点で上記に挙げたウォーキング・デッドやザ・ロードと同様、明確に敵は人間であるという事が示唆される。感染者や菌の存在はゲームプレイや物語の背景として活かされるが人間の敵の方が強く、人間に陥れられて危機に直面するシチュエーションが大半を占める。

プロローグから20年経過し荒廃している世界が美しく描かれるグラフィック。

プロローグ後20年経過し、感染者拡大により崩壊した世界で本編がスタート。
もろもろ裏稼業にも手を染めた事を匂わせるジョエルが運び屋として請け負う仕事が冒頭のツーショット画像の女の子・エリー(菌に感染したが発症していないためワクチン作成=人類救済の要)を運ぶことであり、このゲーム最大の目的である。

ここからゲームとしての遊びもアイテムのクラフト、武器のカスタマイズと順繰りに解禁され幅は出るのだがそれら要素は総じて浅めで、ハードコアなゲーマーは食い足りないであろう。だが、これはストーリーを最後まで見てもらわなくては何ら意味がないこのゲームで、このタイトルを手に取った誰しもがクリア出来るようにとの配慮だと考えると至極真っ当な「浅さ」だと私は思う。
(敵がAIキャラを無視するのも、発見できると難易度上がりすぎたのだろうと推測)

ぬるそうに思えるが右のキノコ人間に噛まれると一撃死という緊張感はある

その肝心のストーリーがとにかく面白い。散々例に挙げているウォーキング・デッド好きならど真ん中な荒廃した世界を背景に、人間同士が織りなす裏切りや猜疑心・虚栄心からくる不和。加えて人格的に少々問題がある奴やサイコパスなど嫌なイベント満載。
それと共に、人にとって何が一番大切なことなのかを考えさせる濃厚な物語が展開するのである。(ゾンビものの映像作品を見ていると既視感を覚える展開もあるが)

進行は基本ジョエルとエリーがある目標地に向かう→そこからまた別の目的地に向かうの繰り返し。この目的地毎にゲストキャラクターが加わり、上記のようなダウナーなドラマが夏・秋・冬・春の一年をかけ展開してゆく。
ロードムービーを見ているかの様なゲストキャラクターとの出会いと別れの連続が興味を持続させ、ジョエルとエリーがお互いただの運び屋と荷物だった関係性から親子とも言える親密な関係に変化していく過程が並行して描かれ物語はどんどん盛り上がっていく。

この1年をかけて語られる物語をプレイヤーはもちろん自分で操作している。それはプレイヤー自らが二人の旅を一番間近で目撃している状態であり、物語が冬から春に至った頃にはジョエル同様に「この子を是が非でも守り通さなきゃならん」という気持ちに自ずとなってしまい、人間の業に迫る簡単には否定も肯定もできないエンディングに胸を締め付けられ、心底痺れること請け合い。
(ゲーム中でもカバーポジションに入るとジョエルの懐にエリーが入って来たりと父性を煽る演出が本当に細かい)

エリーもよりタフに、逞しくなって行く

他の要素も素晴らしく、荒廃した世界にふさわしい黄昏れた音楽(アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督等の映画音楽を多数手がけるグスターボ・サンタオラヤ氏!)、セリフに頼らず表情で語るカットシーンの見事なCGキャラクターの演技、日本語吹き替えのクオリティの高さも物語のリアリティを下支えしている。
ということで、個人的には非の打ち所がなく現在最高峰のストーリー主導型ゲームと断言できるほど満足した。


蛇足としては親と子、喪失したものを取り戻そう・守ろうとする中年向けなテーマ、ゲームプレイでもAIキャラが同伴して進行する展開が、同時期に発売し最高に面白かったBioshock Infiniteと非常に共鳴していて、同じ年にこのようなゲームの物語を成熟させ表現の枠を広げる作品が出たことに2013年が時代の節目なんじゃないかと勝手に感心してしまった。
それにしてもThe Last of Usをここまでに仕上げたNaughty Dogが次世代機でさらに進化した凄い表現のゲームを作るのかと思うと今から楽しみでしかたない。

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