マッドマックス 怒りのデスロード  ジョージ・ミラー監督のマッドマックス以外の過去作との共通点


昨年のコミコンで公開されたトレイラーの余りの壮大な映像に解禁された早朝から興奮がマックスだった頃から早半年、日本では2015年6月に公開されたマッドマックス怒りのデスロード(原題:MAD MAX FURY ROAD)

私もIMAX・Dolby Atmos 2D・立川シネマシティの爆音上映の計3回見てもまだ見たりないというくらいに、公開から2か月たった今もSNS上でも作品への議論や2次創作の画像の盛り上がりをみると活況そのもので見たら最後興奮冷めやらずな人続出な雰囲気。私も鑑賞して以降はいろいろな人の感想や批評を読んだりジョージ・ミラー監督のインタビューを読みふける日々が続いているが、語りつくされてるであろうアクションの先鋭性やビジュアル面の圧倒的さには言及せず、過去の監督作も振り返って見えてきた話の構造の同一性や作家性の部分に目を向けたい。

この4作目が公開される前に復習として1、2、サンダードームを見直すと、意外と前3作は似て非なるものであると気が付いた。ざっくりまとめると

1作目:相棒や妻子への暴行に対しての報復と、その暴力の渦に自らも染まっていく男の話。
2作目:放浪してた男がたまたま立ち寄った町で荒事に巻き込まれ、結果的に救う事になる話。 
3作目:2作目と似ているようだが何かを妄信している集団(飛行機が飛ぶものでユートピアに行けると信じて待ち続ける子供の集落)や組織の仕組みに隷従している集団(バータータウン)を解放する話に見える。

ここで怒りのデスロードは前3作と構造的にどの作品に近いのか当てはめると実は世間的には評価の低いサンダードームに近いのではないかと思う。
そして、ジョージ・ミラー監督の過去作「ベイブ(脚本のみ)」、「ベイブ都会へ行く」、「ロレンツォのオイル」、「ハッピーフィート」を振り返ってみたら驚くほど怒りのデスロードに似た話の構造を持っている事に気づく。こちらもざっくりまとめると

「ベイブ」:食品としての人生しかなかった主人公が新しい人生を獲得し英雄となる。
「ベイブ・都会へ行く」:1作目で英雄となった主人公が物として捨てられた仲間たちの人生を救う。
「ロレンツォのオイル」:前例のない不可能と思われた事柄を不屈の努力で打破する。
「ハッピーフィート」:共同体の異物として追放された主人公が危機を救う救世主となって故郷に凱旋する。

こうやって限られた数ではあるが監督の過去作を見ていくと、どれも話の構造は「何も持たない主人公が不屈の心で戦い英雄になる話」ばかりなのである。そして怒りのデスロードでも「行って帰ってくるだけの話」などと言われるがこれもまた上記に挙げた中でロレンツォのオイル以外どの作品にも当てはまることなのだ。

この構造は最近でぱっと思いつく作品では「ロード・オブ・ザ・リング」や「ホビット」三部作は最たるもので、種族間で一番過小評価されていたホビット族が英雄になって凱旋するという展開はまさにそれ。日本でも誰もが知ってる桃太郎だって似たような構造である。この何者でもない主人公がが旅に出た果てに英雄になって帰ってくるという物語の構造は世の東西を問わず誰の心にも響く太古から磨き抜かれたもっともシンプルな作劇のフォーマットなのだろう。

そしてもう1つ気が付いたことは固定概念に捕らわれる事や、迷信や宗教的な事柄を妄信する集団への疑念や怒りをどの作品でも表現している事だ。
ベイブでは豚が牧羊犬の代わりをできるわけがないという固定概念、ロレンツォのオイルでは既存の治療法や医師の言うことを妄信する人たち、ハッピーフィートでは主人公ペンギンが歌えないことで神の怒りをかって食糧難になったという妄信と迫害、それらとの主人公の戦いが描かれる。これらはイモータンジョーという教祖の熱心な信奉者であり自らの英雄的な死こそ至上というウォーボーイズのニュークスがケイパブルと出会うことでその妄信から解かれ彼女のために戦うようになる流れや、有ると信じていた緑の地が無いことを知ったフュリオサのその後の戦いを思い出してしまう。(フュリオサとニュークスが実質的主人公だなーと改めて確認)

ということでサンダードーム以降の過去作を振り返った事でジョージ・ミラー監督がほぼ同じテーマとフォーマットで撮り続けているのが見えてきたが、どの作品も入念な取材に裏打ちされてる事を思わせる誠実な脚本・演技・映像&狂気でどれを見ても面白かったし感動してしまった。そしてこの先何度となく見る事になるであろう大傑作怒りのデスロードを生み出してくれた監督への畏敬の念がひたすらに高まりまくったのだった。

ブルーレイが発売されたら来るべき続編が早く完成することと監督の健康を祈り「ジョー!ジョー!イモータンジョー!」「V8! V8!」と夜ごと叫びながら鑑賞する日々が始まるぞ!
I am awaited in valhalla!!!!!!



コメント