『ペルソナ5』を終えて ※ネタバレあり

筆者がペルソナシリーズに初めて触れたのはテレビアニメで放映されたペルソナ4であった。
魅力的なキャラクター達の楽しい掛け合いやサスペンスに満ちた連続殺人事件の犯人捜し、テレビが集団的無意識(ダンジョン)への入り口となっている設定の面白さから毎週楽しみに見ていた。
放送終了後にはPSvitaにて発売されたペルソナ4 ザ・ゴールデンを手に取り洗練されたゲームシステムと物語にすっかりと嵌ってしまったのだった。(ショートカット好きの私は里中千枝ちゃんエンドを選んだのだった)

そして昨年、4の初期リリースから8年もの歳月を隔ててペルソナ5が発売された。
年始にはクリアしてしまいもういい思い出になっている(もはやかなり忘れ始めている)
なのでペルソナ4、5を遊んでシステムと物語の繋がりについて見えた事を書こうと思う。

まずペルソナとは心の力が古今東西の天使や悪魔の姿を借りて具現化したもので、似た表現のもので言えば「ジョジョの奇妙な冒険」のスタンドと同じようなものとして出現するが、主人公はありとあらゆるペルソナをとっかえひっかえ使える。これはゲームシステム的にも真女神転生から受け継がれる悪魔合体システムでいろいろな悪魔を作る遊びを提供するためでもあり、この作品のディレクターである橋野氏が常に言っているようにペルソナシリーズの根っこである『ジュブナイルRPG』としての側面、分けあって高校を転校してきた主人公の将来の夢・進路が確立していない状態【何者にもなれる可能性】を表わすことにも繋がっていて見事な設定ある。反面仲間になるキャラクターは例を挙げるとペルソナ5では杏はモデル、祐介は画家と明確な夢や目標をもっている・後に持つ者が固有のペルソナを所有している。
(4に比べ5の主人公は転校するきっかけとなる行動・意思が明確に表現されているので、初期ペルソナであるアルセーヌが語ったり一度去り戻ってきたりするのも主人公の『正義』の心に根差していると考えるべきだろう。※この正義の危うさについては物語上で言及されるのでぬかりない)

アドベンチャーパートについては主人公が転校してきてから物語に決着がつくまでの1年間を週単位で追っていく形なので冗長とも思える時もあるが、この長さも計算されているのではと思う。筆者はもう三十路も過ぎて1年があっという間に感じるような時間感覚になってしまったが高校生の自分を思い出してみると1年が恐ろしく長く感じられたものであるし、そんな単純な理由以外に主人公がいろいろな人(サブキャラ)とのコミュニケーションによって起こる内面の成長がRPGパートでの強化に繋がっている本作は。肉体的な成長を意味するパラメーターの多い他の作品の中において異色な部分であり、内面・精神的成長を描く事に1年という尺が必要なのだと思う。
という事で設定やシステム、物語も含めペルソナシリーズとは平たく言ったら自分探しの物語である。(自己を喪失しているクマやモルガナは主人公の鏡だ)

本作はエンディングを迎える時に主人公は来た所に帰り仲間たちから巣立っていくのである。ペルソナ5のサイトでも大々的に『主人公はあなた』と謳われている。これは『あなた』(プレイヤー)がゲームを終え現実に戻る事に他ならない。


このインタビューで橋野氏は楽しかっただけで終わらずに「明日に繋げられる何か」を持ち帰ってっもらえればと語っている。
オンラインゲームやスマホゲームでは良くも悪くも延々とアップデートが繰り返され、できる限りそのゲームに長く滞留させようという向きもある。(延々とレインボーシックスシージとオーバーウォッチに囚われ続けている私が書くと説得力がないが)しかしペルソナはその世界で耽溺し続けることを許さず容赦なく終わりを迎える。主人公の自分探しの旅を終えたプレイヤーの現実においても微力でも何か成長するきっかけになれればという思いが込められているからだ。このシリーズは極めて志の高いゲームである。(ちなみに5でもまたショートカットの新島真ちゃん一筋でした)

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